7番目の大陸 水没の謎調査へ

 オーストラリアの東側の海底には、地球で7番目の大陸「ジーランディア」が沈んでいる。その誕生や水没の経緯は長く不明だったが、地球深部探査船「ちきゅう」による調査が1月に正式決定。2020年に海底を掘削し謎の解明に挑む。(伊藤壽一郎)

 ■2つの誕生仮説

 ジーランディアは1990年代の観測衛星による海底地形調査で存在が確認された。面積はオーストラリア大陸の約6割に当たる約490万平方キロに及び、世界最大の島グリーンランドの2倍を超える広大な水没大陸だ。海面より上にあるのは面積の約6%だけで、大半をニュージーランドが占める。

 海底に沈んではいるが大陸だ。地球の表面を覆っている地殻には、厚さが約6キロの海洋性の地殻と、30~40キロと厚い大陸性の地殻がある。ジーランディアの地殻は約20キロで、大陸性と見なされる。大陸性にしか含まれない花崗(かこう)岩や変成岩が見つかっていることも根拠だ。

 3億年前の地球では超大陸パンゲア」が唯一の陸地だった。2億年前に分裂が始まり、現在の6大陸ができた。ジーランディアはオーストラリアの東側部分だったが、約8千万年前に分裂して誕生。約2千万年前にほぼ全域が水没したことが、これまでの研究で分かっている。

 未解明なのは分裂の仕組みだ。二つの仮説が提唱されており、その一つは地球内部から高温のマントルが対流で上昇するホットプルームという現象が、オーストラリアを突き上げて分裂させたとする「マントルプルーム説」。

 もう一つは「ロールバック説」。オーストラリアの東側では海洋地殻が陸の下に沈み込んでいるが、沈み込む角度が深くなり後退するなどの影響で、縁が引き伸ばされて分裂したとみる。どちらが正しいのか議論が続いている。

 ■3年後に掘削

 この謎を解明するため、豪州政府と海洋研究開発機構は世界最高の掘削性能を持つ探査船ちきゅうで調査し、仮説の証拠を探す構想を2013年から進めてきた。

 ジーランディア北部のロードハウライズと呼ばれる水深1600メートルの浅い海域で、海底下を2200~3500メートル掘削して岩石試料を採取する。費用は100~150億円で、豪州が6~7割を負担する見通し。

 計画を指揮する海洋機構の斎藤実篤グループリーダーは「得られた試料に玄武岩など火山性の岩石が含まれているかどうかがポイントだ」と話す。

 8千万年前ごろの試料から火山性の岩石が見つかれば、激しい火山活動を伴うマントルプルーム説の証拠になり、見つからなければロールバック説が正しいことになる。

 ジーランディアの表面には、陸上だった時代から水没して現在に至るまでのさまざまな物質が堆積している。水没の理由は地殻が薄く沈みやすいためだが、堆積物を分析すれば水没の開始時期や速度まで詳しく分かってくるという。

 ■日本列島にも関係

 掘削計画の実施には国際機関の承認が必要なため、豪州と海洋機構は15年、共同で提案書を提出。今年1月に承認されて実施が正式決定したことで、準備は一気に本格化してきた。

 今後は掘削の詳細な場所や深さを6月に確定。11~12月に深海調査研究船「かいれい」で現地の事前調査を行い、20年の夏から秋にかけて掘削する計画だ。

 ジーランディアは日本から9千キロも離れているが、決して無縁ではない。大陸の辺縁部が分裂することは多くの大陸の成長過程でしばしば見られ、日本列島もユーラシア大陸の東縁部が分裂して誕生したと考えられているからだ。

 沈んだ大陸の謎の解明は、日本列島や日本海の形成過程を詳しく知る手掛かりになる可能性がある。

 斎藤氏は「早く掘削を実現し、大陸の分裂や成長のメカニズムを解き明かしたい」と意気込んでいる。